* 不自然な女性美
以前から気になっていました。
クリムトの画集の中にあったアテナという女性像。
クリムトの描く女性は大抵エロスに満ち溢れているか、もしくは気品に満ちているかなんですけど、このアテナと称する作品の女性だけは「誰、、?」って思っていたんです。
どう見ても美しくもなくセクシーでもない。
どこか恐ろしげな感じさえする表情でじっとこちらを見据えている女性。
実は彼女は、あのギリシャ神話の中の全知全能の神ゼウスの娘なんです@@
ギリシャ神話の中の子供の誕生は奇想天外なものが多いんですけど、このアテナも予想通り、というか予想をはるかに超える誕生の仕方でした。
ゼウスの妻メーティスがゼウスの子を身籠もりますが、メーティスが生んだ子によって身を滅ぼされると予言を受けたゼウスは、妊娠したメーティスごと飲み込んで亡き者にしてしまいます。
は? それってありですか? という常識的な疑問はこの際お忘れください(ーー;)
それでゼウスは安心していたのですが、ある日激しい頭痛に襲われました。
あまりの痛みに耐えきれなくなったゼウスはプロメーテウスに自分の頭を斧で割らせます。
するとそこから成人したアテナが甲冑を身につけた姿で現れました。
そしてその瞬間大地と大海は轟音を発しながら揺れ動き、太陽は軌道上で停止したと伝えられています。
まあ、恐ろしく派手な誕生ですね@@;;
アテナは戦いの女神であり都市の自治と平和を守る守護神ですが、その強さは圧巻で、ゼウスの息子で残忍な戦いを好む軍神アレースを一撃で倒すほどです。
でもアテナは戦うばかりではなく知恵と芸術の女神でもあるのです。
そのプライドは高く、以前ペガサスの話の時にも書きましたが、自分を侮辱したメデューサを、髪の毛が蛇の妖怪に変えてしまったというエピソードを持っています。
ゼウスに飲み込まれても、この世に自ら生まれ出でてきた女神アテナは凄いの一言なのですが、実はゼウス自身も自分の父親クロノスに飲み込まれて殺されたにもかかわらず生き残った息子なのです。
そして同じように我が子を飲み込む運命となったのです。
ギリシャ神話の中によく出てくる我が子を飲み込むという行為は、それをしなければ親の方が子によって滅ぼされるからなのですが、これは何を意味しているのかと考えると、かなり深〜〜いものがあるように思います。
とにかくこうして再びクリムトの絵を見るとアテナの持つ恐ろしさと高貴さがよくわかりますよね。
今回掲載した他の立像や絵にはない強烈なオーラが漂っています。
これからは気持ちが弱った時は、このクリムトのアテナを見て勇気を奮い立たせてみるのも良いかも。
* アテナは別名アテーナー、アテーネ、アテーナ、アテネ、
アテナイなど時代や地域よって呼び名が変わります。
以下の写真は、クリムトではなく別の画家や彫刻家の作品です。
様々な画家や彫刻家がアテナを創造していますが、クリムトの絵はかなり不気味な感じがしますね( ̄ー ̄)
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